響くガツっっという音。そして。

 

夢 に 楽 土 求 め た り 3

 

 
「・・・っきなりあっぶないやっちゃな自分」
 忍足先輩のあきれ声。
 ボーゼンとそれを見守ってしまった、フェンス越しの僕と宍戸さん。
 の決まったと思った肘鉄は、忍足さんがとっさに肩からづらしたテニスバッグによって遮られていた。
 
「・・・・っっ」
 丁度グリップの部分に肘が入ったのか。 の顔が痛そうに歪み、瞳にぶわっと涙がにじむ。
 それを見て、ようやく思考回路が動き出し。慌ててコートからグラウンドへ走る。
 
!大丈夫?」
 まず真っ先に涙目のに声をかける。
 それから忍足先輩を見上げる。
「すみません。忍足先輩も大丈夫でしたか?」
 見上げて問えば、
「なんやこの状況だとオレがいじめたみたいやなぁ」
 忍足先輩が溜息をつく。
 
「くっ、まああながち間違いじゃないんじゃねーの?」
 宍戸さんも状況を理解したらしくて、苦笑。
「オレ、謝んないからな!」
 ぎっとが忍足さんを睨むけど、全く効果はなさそう。
「すまんかったなー」
 そう言って、楽しそうに忍足さんの手がの頭に再度伸びた。
「っな!」
 ぐりぐり頭を撫でられて、暴れるのを見越されてか、ぎゅっと忍足さんに動きを封じられてジタバタと暴れる
「忍足先輩!!」
「なんや昔の岳人を思い出して微笑ましいなあ」



「ほなまたな、宍戸に鳳にちゃん」
 
 上機嫌の忍足さんが片手を上げて去っていく。
 そして今にも忍足さんを追いかけて蹴りを入れそうなを、押さえ込んでる僕と宍戸さん。
「離せ鳳っ! がーもう後で覚えてやがれよっ!」
、落ち着いて。とりあえず医務室行こう?」
「そうだったな。肘平気だったか」
 ふう、と宍戸さんがから離れる。
「長太郎、もう今日は上がれ。コイツどうにかしろ」
 
 
 
 
「一応湿布貼っておくからね」
 医務室に来たのはいいけれど、先生はいなくて、無理矢理椅子に座らせたに僕が湿布を貼る。
 ぺたりとの肘に大きめの湿布。
「・・・ありがと」
 しょんぼりと目線を床に下げている
 お礼の言葉の後、少し沈黙があってから、ぽつりとが呟く。
「ごめんな。頭に血が上ると周りに目が行かないっていうか、さ。落ち着いてから自己嫌悪しちゃうんだよね〜・・・あーもーガキだなぁ」
 寂しそうに笑う。
 
 でも僕は、そんなが少し羨ましいと思うよ。
 どこか人の顔色を伺ってしまう自分とは違うから。
 
 そう思ったから、言葉を紡ぐ。
「そんなに急いで大きくならなくたっていいんじゃないのかな。のペースで大人になればいいんだよ」
 
「・・・・・ありがとうな」
 
 再びお礼を言われて。
 顔を上げたは、とても嬉しそうに笑ってくれた。

 

□ 

 
 中学になってから、突然皆態度が変わった気がするんだ。
 女子と男子の体格の違いとか妙に区別されるし。
 付き合っただの好きになっただの言い出すし。
 
 変わっていくみんなについていけなくて、一人戸惑っていた自分に鳳は本当に救いだった。
 変化していくのが怖くて、意固地に女らしさから遠ざかって。
 保健室で言ってくれた「のペースで大人になればいいんだよ」って言葉。
 それにたくさん救われた。鳳は自分がこんな風に悩んでるなんて知りもしなかっただろうケド、本当に嬉しかったんだよ。

 

 4へ続く