俺と彼女---が出会ったのは、中学入学の日。
 
 
とても大切な、
         大切な思い出。

 

あ ま り に も 鮮 や か で

 

 僕の名前は鳳長太郎。
 今日から氷帝学園中等部に入学する。
 周りは幼稚舎からの繰り上がりがほとんどで、中学生生活スタート!と言った感覚はないけれど、新品の制服がワクワク感を感じさせてくれた。
 今まではピアノやバイオリン一辺倒な自分だったけれども、ちょっと貧弱な自分に活を入れる気分で・・・中学からはテニス部に入部する予定。
 なぜテニスかというと、下見で色々な運動部を見学していて、「この人たちと一緒にプレイしたい」、「試合したい」と強く思ったから。それくらいテニス部員の人達は輝いて見えた。
 氷帝テニス部は200人を越える部員数がいて、補欠になるのさえ難しいと言われているけれど、気になんてならなかった。
 
 
「チョタ!クラス分けの表チェックしようぜ!」
「うん!」
 友人の弾んだ声がしてはっと声の方へ向かう。
 クラス分けのボードを見るのに溢れかえる人、人。
 
「うげこれは・・・」
 ちょうど混みあっている時間だったのか、あまりの混雑具合に友人が唸る。
「うーん・・・混みすぎだね・・・」
 入学前にクラス分けを連絡してくれても・・・と毎回思うのだけれど、これが一種氷帝の新学期の楽しみ(幼稚舎も毎年そうだった)であったりもする。
 が、こうも混雑していると、自分はとても困る。
・・・・自分で言うのも切なくなるから何だけど・・・僕はとてつもなく身長が低いのだ。
 だから、こうも混みあっていると全くボードが見えない。身長順で並んだら、いつだって先頭だし・・・ヘタすると同い年の女の子達よりも、低い。何度女の子に間違われた事だろう。ダボダボのブレザーが泣ける。
 名前には長が付くのにこれはヒドイんじゃないだろうか。
 
「この混み具合じゃしばらく様子見ないと無理かな」
 はぁと大きく溜息をつく。と、友人がニヤリと笑って僕の頭をわしわしとかき回す。
「ちょ! やめろよ!」
 これをされると、自分の身長がいかに低いのか知るようで嫌いだ。子供っぽいって言われてもかまうもんか!
 ジタバタと無駄な抵抗で暴れてみる。
「チビっこのチョタに変わってオレが見てき」
 そこで友人の言葉は途切れた。そして響き渡る友人の絶叫。
 
「いってぇぇぇぇ!!」
 
 呆然とその光景を眺めていた自分。
 おそらく、友人の背中には見事な足跡が付いているだろう。
 あまりにも鮮やかに蹴りを入れた人物に、ただ僕は見入っているだけだった。
 
 僕と同じか、それ以下かもしれない身長の少女が、小柄な身体を精一杯駆使して決めた回し蹴りはとにかく見事だった。いっそすがすがしいくらいに。
 
「チビっこなめんな!!」
 
それが彼女、との始まり。

 

 

 

タイトルはもちろん蹴りがって意味です(爆)
書いてみちゃったよチョタ夢! 甘くもないですがこれから主人公とチョタの成長を見守っていただければ幸い。

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