「帰ろ」
 
 振り向いた先には予想通り長太郎がいて、伺うように少し離れた場所であたしを見てた。
 身長だけはやたら大きいクセして、まるで捨てられた子犬みたいじゃないの。
 
 昼休みに長太郎から言われた言葉を思い浮かべる。
 
『好きなんだ』
 直球よ、直球。心にどーんて、きた。
 だけど素直じゃないあたしだから、のらりくらりと返事は逃げちゃった。表面上は冷静に見えただろうケド、驚きすぎて脳内大パニックだったんだもん。
 でもですよ、さすがに午後の授業中ひたすらこの出来事を考えてれば以外に落ち着くもので、今は通常仕様のあたし。
 離れた場所であたしを伺っている長太郎を見たら、返事をじらしてみたくなるのが性ってものよ。
 
「あーあ。返事しようかと思ったのになぁ」
 長太郎に聞こえるくらいの声でそう言って、少しいじわるに笑えばダッと駆け寄ってくる。
 分かりやすいなあ、もう。でもそんなコイツだから、好き。
 あーもう悔しいけど大好きだ!
 
 
って・・・分かりやすいよね」
「え?」
  
 見上げれば穏やかな笑顔。
「返事、もらったから」
 そう言って、掠めるように触れ合った吐息と吐息。
 そしてきゅと大きな手のひらに包まれた手。
 
 
 分かりやすかったのはどっちだったのか。
 どっちだったのかな。
 
 

- ど っ ち が ? -