気が付けば目で追っていて。
 
    気が付けば励まされている自分がいて。

 
 
走 る 君 を 見 て た

 

 
「打ち合いは終了! 各自ボールを拾い後片付けに入れ!」
 同級生のテニス部員たちとのひっきりなしのラリーが終了して、ふうと大きく息を吸い込む。流れた汗に、風が気持ちよく吹き抜けていく。
 コートの隅に転がっているボールを拾いながらふと視線がテニスコートからグラウンドへ。ここからグラウンドはよく見える。
---そして泥だらけでグラウンドを走るもよく見えた。
 ドリブルの練習中なのか、ペアで交互にボールを取り合いながら前に走りこんでいる。
 小回りが利く俊敏な動きで、器用には相手からボールを奪い前へ進む。それでも相手も食らい付いてまた取られる。
 
、頑張ってるよな・・・」
 目標はやっぱり僕と同じで『レギュラーになること!』
 昼休みにご飯を食べながら、お互い所属する部活の魅力をとりとめなく語っていたときに溢れた言葉。
 球技という事以外、全く共通点のない僕との部活だけれど、やっぱり思うことは同じ。
『強くなりたい。勝ちたい。レギュラーになりたい。みんなと走りたい』
 普段クラスだとお互いに協調性を優先させるくせに、部活の事に関しては全く協調性も妥協もお互いなくて笑ってしまった。
『だってそれが原動力だろ』
 唐揚げをフォークで突付きながらがにやっと笑う。
『どっちが先にレギュラーになれるか。勝負だな!』
 
 
「長太郎、なに笑ってんだ?」
「わぁっ!?」
 ひょいっと顔を覗き込んできた宍戸さんに驚いて奇声を上げてしまう。
「そんなに驚くことかよ」
 困ったように宍戸さんは頬をポリっと掻いた。
「す、すみません宍戸さんっっ。ええとっスね、ぼ・・・俺、頑張りますからっっ!!」
 両手に力を入れて意気込みを伝えれば、突然の俺の大声に逆に宍戸さんが目を見開いて驚く。
「目の前でいきなり叫ぶなよ、ビビるだろうが!」
「っと、すみません!」
 
 ・
 
 ・
 
 ・
 
 何やってるんだ鳳は。
 汗を拭って、ふと視線がいったテニスコートの端。
 宍戸先輩とじゃれている鳳に目がいって笑ってしまう。
 ヘッドロック掛けられてるし。本当に何やってるんだ。
 
 段々と時間が伸びてきた夕暮れに、時刻がもういい時間になっている事に気が付く。夕暮れ空を見上げて、グラウンドを走る運動部員の声を聞いて、再度視線をテニスコートへ。
 走る鳳の背中が見えた。
 
 あいつも部活頑張ってるよな。
 
 なんだかほんわかとあったまった心と、充電された気力。
ー! ラスト一本走りこむよー!!」
「わっかりましたぁぁぁ!」
 力強く、足は前へと踏み出した。
 
 
 
 
 
 
 お互い同じ事を考えていたなんて、あの頃は全然気が付かなかったよね。
 
 
 

 

 

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