救いも何もあったもんじゃない景時さん過去SSです。
どこに神子が出てきてるんじゃっってカンジ(・ω`)
でもこのくらいのダメっぷりのヘタレな景時さんが管理人は大好きデスヨ?

どんなに流しても流しても、
もうそれは自分の身体に染み入ってしまったのだろう。


 
 ふっと意識が戻った時、ほんの数刻までは共に戦ってきた人間が、目の前で血を溢れさせて倒れていた。
 何度も何度も急所を外されたのだろう、苦悶の表情と飛び散った血がただひたすらに凄惨な時間を想像させる。

「・・・・っ!」
 恐怖で、目の前が一瞬凍りつく。
(何でだよ、何で何で何で!!)
 訳が判らなくて。状況が掴めない。
 オレは、どうしてこんな所にいるのだろう・・・?
 
「景時」
 抑揚のない、冷酷な声が自分の名を呼ぶ。
 のろのろと視線を上げると、ただひたすらに鋭い視線とかち合う。
「ふ・・・、何を放心している?」
うっすらとその人物は微笑む。それは本当に形だけの微笑。
 目の前に亡骸がある事など、目に入っていないようで。
「オ、レ は・・・」
 頭が痛い、気持ち悪い。
 
 痛む頭に手を伸ばし、違和感に気付いた。 気付いてしまった。
 少し乾いた、けれどもぬるりとした感触に。 手が、濡れてる。
 それに、さっきから利き手に力が入らない。
 
「っ・・・あ・・・・」
 考えないよう、見ないように、凍らせていた思考が一気に覚醒した。
 痺れが緩んだように、一気に力の抜ける身体。
 利き手から何かが落ちた、響く金属音。
 
「は・・・・オレが・・・はは・・・・・っ!」
 真っ赤に濡れた両手、濡れそぼった服。どこもかしこも自分の身体は、赤かった・・・。自分が、殺した。
 
「・・・・これ、しか・・・方法がなかったんだ、よ・・・」
 
 恐ろしかった。ただ恐ろしかった。 生きたかった。死にたくなんてなかった。
 だから、だけど、だから!
 
「景時、お前とお前の家族の安全の保証はしてやろう。私は先に行く。その姿を  どうにかして後から来い」
 さらりと頼朝様は言って、何事もなかったかのように馬に飛び乗った。
 
 そうだ、あの方は源氏の総大将・・・。
「わかり、ました・・・頼朝様」
 
 
 
 
 
 
 あの日、血塗れた身体を洗った事だけやけに鮮明に覚えている。
 何度も何度も。

 駄目な人間は落ちるときはここまで落ちるんだ。 無性におかしくなって、笑った。
 洗ったって落ちやしない罪に染まった手なのに、ね。
 それでも、必死に、今も分かっているくせに必死に、流す。

 必死に、必死に・・・
 
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