変わるもの。変わらぬもの。
(こりゃ、驚いたな)
 将臣は数年ぶりに邂逅した幼なじみである望美に、気づかれぬよう視線を投げ、望美が時折垣間見せる物憂げな表情や鋭い仕草に目を見張った。
 
 望美は、離ればなれになったあの時とほとんど変わらぬと将臣は考えていた。だが、それは大分思い違いだったらしい。
 こちらに来てまだ半年も経っていないと聞いたが、望美のその時折見せる佇まいは、地に足をしっかりとつけ前を見据える強い者が持つ瞳のそれだ。けれど、ふと崩れてしまう危うさも望美にはある。
 望美にとっては5ヶ月程、将臣にとっては数年。何時でも一緒にいたからこそ、離れて久々に見た望美の違いをはっきりと将臣は感じ取った。

(まあ、俺も人の事は言えねぇか)
 
 あまりにも語れない事、望美や譲以外に守りたいものが自分には出来てしまった。己の手で守れるもののなんと少ないことか。
 
「おい、望美」
 努めて明るく軽く声を出し、望美を呼ぶ。
「なあに、将臣君?」
 ぱっと将臣に顔を向けた望美の顔は、昔と変わらない幼馴染の表情。それに安堵し、そして少しの寂しさも感じる。望美の頭に手を伸ばし、ぐしゃぐしゃと髪を撫でる。
「ちょっと将臣君なにするのっっ!!」
 望美から非難の声が上がる。
 そんな望美の反応を笑いながら流し、せめて、と将臣は思う。
「あんまり考え込むなよ。俺に言え。相談にくらい乗ってやるからな」
「将臣君…ありがとう。大丈夫だよ」
 はっと息を呑んだ望美は一呼吸置くと、抵抗を止め嬉しそうに笑う。
 
 何年経とうと、忘れなかった、変わらなかった想い。
 せめて、側にいられる間だけはこの笑顔を護れる者で。
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2008/3/19
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