幼馴染
 家族のようで、けれどキョウダイじゃない。
 友達と言うには近すぎて、けれど決して恋人ではない。
 そんな関係が、男女である将臣君とあたしの【幼馴染】という関係だ。
 
 普段他人には無意識に隠す適当な態度やあしらい、どうしようもないジョークに本音、だらしない普段着に起きぬけの顔。それこそ、生まれる前からあたしたちの家はお隣さん同士だったわけで、年が近くて隣となれば必然的に遊ぶし仲良くなる。それに今更何かを隠すような間柄でもない。
 家族のようで、けれどキョウダイじゃなくて、友達と言うには近すぎて、恋人のようには甘くはなくて。うん、将臣君とあたしの関係は、まさに空気のごとく自然な関係だった。隣にいるのは当たり前。一緒にいても気を使わない楽な間柄。
 こんなに楽な関係に慣れすぎてしまっていたから、あたしは考えないように見ないように蓋をして来た事がある。
 それは決して開けては駄目だ。
 
「おい、望美? なにボーッとしてんだよ遅刻すんぞ」
 将臣君が振り返ってあたしを手招く。
「ごめんごめん、ちょっと今日の小テストの事考えちゃっててさ」
「…嫌なこと思い出させんなよな…あー…ちっとも予習してねぇぞ俺は」
「あれぇ? 将臣君が勉強してる姿なんてあたし見たことないなぁ」
「余計なお世話だ! おら行くぞ!」
 片手を掴まれて強引に引きずられるあたし。
 
 こんなに楽な関係に慣れすぎてしまっていたから、あたしは考えないように見ないようにある事に蓋をした。

 壊したくなければ壊さなければ良い。

 おそらくきっと、将臣君も思っている。壊さなければよい、と。
 ずっとこのままの関係で気楽にいられれば良いと。
 けれど、その考えはある日突然一変する。
 
 
『あなたがわたしの…神子』
 
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2008/1/18
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