晴れ渡った、どこまでも澄んだ空。目に飛び込んできた青空。
 この青を見やれば、思い出すのは彼の人の事だけだった。
 
 国を失い、兄を亡くし、それでも地面に足をしゃんと付けていられたのは、その人の存在がとても大きい。
 慰めの言葉など心の穴を通り抜けるだけの荒んだ日々、何も言わずにただ側にいてくれた。汚い言葉も醜い言葉もたくさん投げつけたと思う。けれど、彼はそこに居てくれた。
 ただ静かに、辛抱強く、私が心の整理をするのを見守っていたのだ。
 沈黙や静寂がこんなにも心地よいものだとあの人に出会って初めて知った。
 澄んだ雰囲気とその青を持っているあの人に、私が惹かれたのは必然だったのかもしれない。
 
 思いだして、ぐっと零れそうになる涙を堪える。
 伝えたいことがある。為さねばならないことがある。
 けれど、最終的に辿り着く想いは一つだけだった。
 
「・・・もう一度、会いたいの」
 
 どこまでも澄んだ空。蒼天。
 灼熱の砂漠でも、見上げるその青は変わらない。
 そしてこの青は彼の人の見上げる空にも続いているのだ。
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2007/5/15
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