ひとしお
 出会った時から、ずぅっと見てたのよ?
 
 最初はその強い視線が気になって。話しかけてみたら、とても楽しそうに笑う男の子だって知って。
 槍術が大好きで、遊びに来るたびに、いつも傷だらけで駆け回っていたよね。
 落ち着いてる事なんてなくて、いつもお付きの人が泣きそうになりながら探してたっけ。そしてわたしも探して追いかける側。
 
 探し出すといつも兄と勝負ばかりしていて、わたしになんてこれっぽちも見向きもしなかった。でも、そんな一つにいつでも直球に進んでいく姿も目が離せなかった。
 いつも決まって、最後にようやくわたしに気づいてくれて。
 
「ずっといたのか」
 毎回そっけない言葉をくれたよね。
 でも、その瞬間がわたしの楽しみだった。いつでも最後には絶対に気がついて、声、かけてくれたから。
 戦争で行方がわからなくなった時、初めて思った。
 なんでもっと話さなかったんだろう。
 もっとたくさん、話したいことがあったのに。
 もっと、もっと、いっぱい…っ
   
 
 
「ターナ、何百面相してるんだ?」
「え? あ…エフラム?」
 
「部屋に入っても気づかないしな。何ぼーっとしてたんだ?」
「む、失礼ね。ぼーっとなんてしてないわ」
「いやしてた」
「してないもっ! ただ…」
「? なんだターナ、今度は」
 
 いつも、思ってる。
 いつも、想ってる。

 
「…エフラムの側にいられて幸せだなぁって」
 
「そうか」
 やっぱり素っ気ない返事を一つ。
 でも、大好きな、不敵な顔が優しい笑顔に変わる。
 
 いつも最後には絶対気がついてくれた。
 今は、ふと気付けばエフラムの存在を感じられる。
 それがとても幸せで。
 
 いつも、思ってる。
 いつも、想ってる。
 
 大好きな貴方の事を。
 
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2005/5/25
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