競牡丹くらべぼたん
エルトシャン×ラケシス
牡丹は百獣の王、獅子に描かれる定番の絵柄だそうです。
獅子といえばFE聖戦の系譜、エルトシャンしか出てこない貧相なボキャブラリーな自分な訳ですが。
真っ赤な牡丹はエルト兄さんにぴったりだとかなんだとか思っちゃったり。
別名「花王」「花神」「富貴草」
エルトシャンとラケシスはお互い支えあって成長してるといいなぁと。
ラケシスは兄を手伝えるようになりたくて自分を磨き、
エルトはそんな妹に相応しい兄になりたくて自分を成長させてそう。
「エルト兄様!」
 
 呼ばれてふっと、机に向かっていた顔を上げる。
 誰に呼ばれたなど考えるまでもなく。
「ラケシス、そんなに慌ててどうした?」
 執務室にノックもなしに飛び込んで来た、最愛の妹に声をかける。
 
「っ!? 兄様ごめんなさい。ノックもしないで扉を開けてしまって…」
 入ってから気付いたのか、慌ててラケシスが謝ってくる。
「気付いているなら、いい。次回から気をつけろ。
 それで、どうしたんだそんなに慌てて?」
 う…と一瞬ラケシスは声を詰まらせ、俺に視線を向けて、
「…エルト兄様の顔が見たかっただけで…えと、あの、元気になりました」
 潤んだ瞳をごまかすように微笑んでそう言った。
 椅子から立ち上がり、そっとラケシスを抱き寄せる。びく、とラケシスの身体が震えたのが伝わった。
「ラケシス、俺に嘘はつくな」
「っ…!」
 しばらく震えていたラケシスは、やんわりと俺の胸を押し返す。
 そして俺を見つめる。
 自分とそっくりの瞳の色に己の顔が映し出されるのをじっと見つめた。
「また…言われてしまって。兄様に相応しい妹になろうって思うのに」
 
『容姿だけはエルト様と同じ美しさの出来損ないの姫』
 
 古参の家臣達からよくそう評される妹。
 父が外で生ませた子供。
 己の母が亡くなってから、ラケシスとその母は父の元へやってきた。
 古参の臣下の評が厳しいのはその所為だろう。
 ラケシスが努力しても、彼らはその一つとして、知ろうとさえしないのだ。
 
「弱音を吐いてごめんなさい…。兄様に言うのは卑怯だってわかってはいるの」
 自分の力で彼らを納得させたいの…そう呟く。
 その言葉を語るラケシスの瞳は、凛としていて、先ほどまで手折られそうな雰囲気は微塵もなく。
「わかった。俺は何もしない。お前の力でヤツラを唸らせてみせろ」
 くしゃっと混ぜたラケシスの金の髪は、光に反射して明るく輝いた。
 
 初めて会った時から、俺の女神はお前だと思うくらいに輝いているのに。
 努力を惜しまない妹に…彼女に、どんどん惹かれていく己に気付く。
 この気持ちを打ち明ける事は出来はしないけれど。
 その彼女の最高の兄として、己はもっともっと高みを目指そう。
  
「兄様、大好き」
 
 
俺の運命の女神は嬉しそうに微笑んだ。
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2005/5/6
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