もう恋なんてしない
ラクチェ→セリス
 セリスが去っていく。その姿が見えなくなるまで、ラナは人形のようにピクリとも動かずただ森の中たたずんでいた。
 
(困った・・・)
 たまたま通りがかったラクチェは出ていくタイミングが掴めず、息を潜めて木陰から様子を伺っていた。なぜ隠れたのか。とても2人が真剣に話していたから近寄りがたかったからかもしれない。
 
 セリスの姿が見えなくなった瞬間、遠目でもわかるラナが泣きくずれた。
 本能的に感じてしまった。先ほどの場面はラナからの愛の告白だったのだと。
 その姿を見て、ラクチェはどこかホッとした気持ちで息を吐いた。息を吐いた後、愕然とする。自分は何故安心などしているのだ。ラナは泣いているのに。
 
 セリスがラナを受け入れなくて良かったと、思ってしまった。
 たった一人を選ばないでと叫ぶ自分を見つけてしまった。
 自分は最低ではないか・・・。
 
 そうして、ラクチェは突然理解した。これが、恋なのかと。
 セリスを好きだと思う気持ちは、スカサハや仲間達に抱く気持ちとは違うのだと。
 
 どうしていいのか分からない。息が苦しかった。
 心臓が絞られて、圧迫されているような気がする。
 
 これが恋だというのならば、自分はもう二度と恋などするものか!
 ラクチェは痛む心の奥を押さえるように、きつく体に腕を回した。
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2007/9/2
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