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Fate/hollow ataraxia
夢の中の住人は君に
☆
「…っ。すみませんランサー。少し時間を稼いで下さい」
そう言って瞳を閉じたスーツ姿の女は、何の警戒もなくオレの腕の中に崩れこんだ。
「おいおいおい。いきなりこれか」
こっちは召喚されたばっかりで、まだ状況も把握してねーぞ。
ただ、この女を捨ててどこかに行こうとは思わなかった。女子供は殺さない、見捨てない主義だ。
「それでいい女だったら余計に見捨てられねぇな」
腕の中にいる女を眺める。
28〜30歳辺りだろうか、整った顔立ち、均整の取れた身体、無防備に閉じられた瞳。スーツを着こんでいるため女性らしい優美さこそないが、着飾らなくとも感嘆する美しさ。そして感じる半端じゃない魔力量。
瞳を閉じている姿はえらくオレの欲情をそそった。
そしてふと目についた。耳に付いているその、
「……バゼット…?」
声に出してもまだ自分の言葉を疑う。
なんでおまえが。
「夢か?これ」
英霊は夢なんか見ないハズなんだが。
見ているのはそもそもいくつもある世界に召喚されたオレの記憶。
そしてそれは「オレ」まで届かず記憶は消去されるハズ。
が、考える事はそこで止めざるをえなかった。
感じる複数の人間の気配。それは消そうとしても出ている殺気。
「三流っぽいのばっかりな気配だな。ま、バゼットが起きるまでのヒマつぶしか」
すでに手に握られた赤い槍。見慣れた相棒。
「ラン、サー…」
思い出した聞きなれた声が、無意識なのか言葉を落とす。
瞳は閉じられたまま。
まぁなんだ。これが夢でも現実でもなんでもいい。
少しどころかいくらでも時間は稼いでやるから。
「ちゃんとオレを見ろよ」
目を開いた時、最初に視界に入ってきたのは。
祈るように願うようにこちらを見つめる揺らいだ赤茶の瞳。
本当に夢じゃないのかと疑いたくなるから。
----意識を失った私に確かに聞こえた想い(こえ)。
早く目よ覚めなさい。これが夢の言葉ではないと確信を持つために。
「んじゃ、サクっと片付けるかね」
オレはそろそろ射程内に入る敵達に向けて、すっと槍を突き出した。
「定番だが死にたいやつから来い」
> 「半端に途切れた10のお題」配布元【
気楽に10のお題
】 > 夢の中の住人は君に
2005/12/21
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