あなたと
これのみバゼット→アンリ
そこは、別段変わったものなどない山間の風景だった。
 
 昔は人々が生活していたのだろうか。しかし今は人影などなく。
 
 白っぽい崩れたガレキが多数あり、辺り一面に広がる草原。
 ゴツゴツした岩が牧草の合間を埋めるようにちょこちょこと顔を出している。それはもう、景色の一部となっていて、違和感なく調和していた。
 
 少し標高の高い場所なので、空気が薄いような。
 景色全体がきりっとした静謐な空気をまとっている。
 
 
 
「----これが、貴方の見ていたものか」
 
 
 
 呟いて、息を吐いて。
 
 
 奇跡の4日間。
 
 
 その永遠に繰り返される4日間の中で、蘇生する私が時々夢見ていた風景。
 
 
 それは【誰が】見ていた景色だったと。
 見ることしか許されなかった景色だったと気づいたのは。
 
 
 憎くて憎くて憎くて。
 それでも夢見るほど彼が思い返す景色。
 
 
 
「帰ってきたよ」
 
 今はもういない貴方に。
 けれど世界中にいる貴方に。
 
 
 皮肉な笑みを浮かべた姿を思い出して苦笑。
 別にアンタと会う気なんてこれっぽっちもねぇよと、空耳が聞こえるほどその存在を意識する。
 
 今はもういない貴方に。
 
 
 
「お前と一緒に色々な世界を見たかったよ--------アンリ」
 
 言葉は静謐な世界に溶けて、お前にまで届くだろうか。
 
> 「半端に途切れた10のお題」配布元【気楽に10のお題】 > あなたと
2005/12/13
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