バゼットさんスケートをする
 なんとなく見たTVには、速く、高く、そしてスローモーションのように着氷するスケーターの姿。 何かの大会だったのだろうか、会心の笑みを浮かべた女性はとても綺麗だと思った。 いつもはそんな事気にも留めないけれど、純粋に美しいと。
 ただ一つの目標に、そしてたった数分の戦いに、ここまで純粋に挑めるのか、と。
 
 私の戦いはただ生き残るために、自分の弱さを隠すための鎧だ。その純粋さにだからこそ私は憧れる。
 
「ランサー」
「---あー、何だ?」
 ソファーで身体を伸ばして雑誌を読んでいたランサーが顔を上げる。
「少し出かけてきます」
「んなら付いてくぜ」
 少し考えて、私は頷いた。
 
 
*****
 
 
 思い切り氷の上を走って走って、見よう見まねで飛んでみる。
 エッジを使ってイン、アウト。
 これは・・以外に楽しいかもしれない。
 TVの中の女性のように、優雅になんて滑れはしないけれど、加速を付けて敵を蹴り上げるように踏み切る!
 
「・・・・おー、てかあっさりダブルアクセルかよ」
 全くのでたらめさに、なんとなく付いてきたランサーは氷上に座り込み笑いを堪える。 でたらめといえばバゼット自身もそうだが、ここがスケートリンクですらない事もでたらめだ。ルーンで湖の一部を凍結させてしまっている。もちろんランサー自身も手伝った。

 バゼットを見る。技術も優雅さも全くない滑りではあるが、いつも以上に自由に動いている彼女を見て。
「バゼットらしくていいんじゃね」
 力強く、真っ直ぐ。
 なぜ突然スケートなのか、いまいち理解はしていないが。
「こんな日もアリだよな」
 バゼットを見やりつつ、目を細めてランサーは呟いた。
> お題以外のランバゼ作品 > バゼットさんスケートをする
2006/2/22
NiconicoPHP