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Fate/hollow ataraxia
逃げるなんて冗談じゃない
☆
数キロ先、かすかにその全貌を見せるのは古びた塔の先。そしてここからでも感じ取れる大気中のマナの巨大な乱れ。
「これはまぁなんってーか、頑張りすぎじゃねえか」
ソレをやはり同じく感じているであろう全身青躯の彼は、片手に握る真紅の槍を、肩たたき替わりのように上下に揺らしている。表情はほんのり楽しそうで。
私は右手に皮手袋を通しながら、つい言ってしまう。
「こんな時に笑うのは不謹慎ですよランサー」
そう言ったにも関わらず彼は私に顔を向け、にっと深く笑う。
しかも私の頬をぐにっとつまんで来た。
「な・・・・っ!?」
「そういうお前は何でニヤけてるんだろうなー。オレの気のせいかぁ?」
「わ た し のどこがニヤけているんでしょう?」
私の頬をつまんでいるランサーの腕を触り、つねられたまま笑顔で答える。ついでにその腕を思い切り握り締める。
彼はすぐに顔をしかめ、
「いやもう今全開で笑ってるじゃねぇk・・・」
ギリギリ。
ぱっと頬をつねっていた指が離れる。
「うんあれだな、正直オレが悪かった」
お互い目を合わせて、どちらともなく吹き出してしまう。
「ほら、行こうぜマスター。オレ達が在る場所にさ。
それともこのまま放置しとくか?」
そうイタズラッ子のように問いかけて。
『逃げるなんて冗談じゃない』
お互いの声が同時に被る。
「だろ?」
「当たり前です」
さあ、私達が在る戦場へ、私達が在る場所へ。
貴方と一緒に駆け抜けよう。
それが、
私の永遠の誓い。
> 「強く、7題」 配布元【
空詩
】 > 逃げるなんて冗談じゃない
2005/12/30
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