お祭り騒ぎだ!
オールキャラ。レイナートルートでのヒトコマ。
「超絶スーパー魔法使い♪ ふーふーん。その名はぁ、その名はぁ♪」
「ふん、ラ・デリ、お前はまだ歌の良さを理解していないな…。これが真の歌だぁ!!」
 ボロンと、妖しげな楽器をメノルカが奏でながら歌い出す。
 騒ぎの種は蒔かれたのだった。
 それは大騒ぎを予感させる、一つの前兆?




「なあ、レイナート」
「なんです、レオンさん? あれ…ウェインまで?」
 レオンに声をかけられ、ウェインに肩を叩かれて、レイナートは笑顔で応答する。
 
「やめろメノルカっ!! お前の歌声で大陸が沈むッ」
 いつもは冷静なラインノールが、今にもブチ切れ(もう切れてる?)寸前で、メノルカに怒鳴っている。
「にゃは☆ 踊るのだ! 踊るのだぁっ!!」
 ユニがメノルカとラ・デリの妖しい歌にのって飛びはね始める。
「おっ!? 楽しそうじゃねぇーか。オレ様が太鼓を叩いてやるぜ! 光栄に思えよ!」
「ゴンゴス様のすばらしい太鼓が聞けるんですね!!」
「うお〜っ!!」
 数名の歓声と、太鼓の音が…踊りと歌に混じってますますワケがわからないものに変化していく。 

 
「……何か思うところがないかな、レイナート」
 ウェインが笑顔を凍らせたままレイナートに呟く。
「えっ? 何がです」
 レイナートは無邪気に微笑む。
 レオンが頭を抱えて、ぐっと指で示す。
「あれ、目にはいんないのか…お前は」
 ふっと、その方向にレイナートは目をやり、またにっこりと微笑む。
「ああ、あれですか」
 
 オルテガが思い切りよく笑いだし、嫌がるジョシュアをからかっている。
  
「リンクまで…」
 城内を見回し、さらに頭が痛そうにウェインが唸る。
「なんか、凄くなってねーか?」

 ギガとガンラドとグレンが、いつの間にか酒盛りも始めている。というか、そこかしこでなぜか乾杯のかけ声がする…。
 ちゃっかり端の方では、ジャロムがウリルにワインを持っていく姿も目に映る。

 
「はやく毎日、こんな風になるといいですねぇ」
 幸せそうにレイナートが呟く。一瞬…ウェインとレオンは固まった。
 
(毎日これなのか?!)
(レイナート、奥が深すぎるぜ…)
 
「喜びも悲しみも共にある、今この風景を早く…」
 それを聞いて、二人は安心したようにうなずく。
「まあ、な。今日くらいはハメ外してもいいかあ。明日からはまた戦いだ」
「そうだね」
 言い終わると、レオンは風のような素早さで駆け出す。
 
「おらぁ! アイロスっ!! 勝手に人の女に話しかけんなぁっ」
「…私がいつ、お前の女になった? レオン…?」
 ジュノーンの冷めた声が、レイナートとウェインにかすかに届く。
「ミカヅキさんにも見せてあげたいなぁ。今、この瞬間を」
「ああ」
 ウェインがまぶしそうに皆を見つめながら同意する。と、ウェインのマントを誰かがくいっと引いた。
「え? あ・ティリス。どうしたんだい」
 ふわんと、ティリスがウェインとレイナートに向かって笑う。
 それからウェインをしっかり見て、おねだりするように首を傾げた。
「ウェイン、私と踊ってくれる?」
 ウェインが照れたようにはにかむ。
「ああ、もちろん」
 すっと、腕をティリスに差し出して、優雅にティリスの手を取る。
「いってらしゃい〜」
 楽しそうなレイナートの声に、二人は笑って返事を返す。
 
「あら! 何一人でいんのよ。いつも一緒にいる子はどうしたんだい」
 突然響いた声に、レイナートはくすっと笑う。
「シャイアさん、なんかオヤジ入ってますよ? いつも一緒にいる子って…ソフィーの事でしょうか?」
 眼鏡をくいっと手で上げ直しながら、シャイアが苦笑する。
「そうそう、ソフィーだっけ? ふふ、オヤジ…。そうきたかい、レイナート」
 くるくるとシャイアは表情が変わる。
 無表情そうに見えて、実はとても感情の起伏が激しいのだ。
 
「相変わらずボクとは正反対の性格だなぁ、シャイアさん」
「ん? あんたはのほほんとした外見と違って相変わらず冷静だね」
 二人とも笑いながら話す。
 周囲のざわめきで、声を大きくしないと聞こえないくらいだ。
「冷静? そうなのかな…」
 幼い笑顔で、でも大人の瞳で、レイナートはシャイアを見つめる。
 アンバランスに成長してしまった、心と体。
「嫌かい? 今の自分が? あたしは自分が大好きだよ…ってこれは余計だね」
 ふる、とレイナートは首を横に振る。そして顔をシャイアに向ける。
「今の自分でなければ、会えない人がたくさんいました。シャイアさんにも、そしてあの子にも…」
 
この魔人の血脈によって出来た、どこかバランスの悪いボクだけれど。


「そうだね…あんたの理解者はたくさんいるよ? それを知ってるなら大丈夫だ」



「レイナート様! 探してたんですよ! あれ…シャイア様?」
 ソフィーが人混みをかき分けて、二人のもとにやってくる。
 人混みにもまれたのか、帽子を手で押さえているソフィーは、いつもと違ってとても年相応の少女の顔をしている。
 
「『あの子』登場だね♪ レイナート」
 にやり、とシャイアが妖しい笑みを浮かべる。
「あははは。そうですねぇ」
「? 何ですか」
 話が掴めないソフィーが、当惑して二人を見つめる。が、すぐに辺りを見回し、ため息をついた。
 レイナートがソフィーの顔を見て、こらこら、という表情になる。
「ソフィー、ああもう、そんなに頭を悩ませちゃダメだよ。白髪になるよ」
 
「あっはっはっは。白髪かい」
 ぎっと、ソフィーがレイナートを睨む。
「レイナート様! この収拾つけるのは誰だと思ってるんですか!」
「うーん。ボクだねー」
 考え込む仕草でレイナートは言うが、あまり悩んでいるように…いやはっきり言って見えない。
「そうだねぇ…皆、お祭りに夢中だからあんた達だろうねぇ、収拾するの」
 シャイアが無責任に言い放つ。
「じゃあ、ボク達も楽しめばいいんだ☆ お祭り騒ぎ。ね?」
 にっこりとソフィーが弱い、警戒心全くゼロの笑顔をレイナートが見せる。
「う゛…あ、私っ、ちょっと向こうを視察に行ってきますっ!」
 なんだかよくわからない理由で、ソフィーがぎくしゃくと騒ぎの中心へと歩き出す。
 
「あら…耳まで真っ赤だよ。かわいいじゃないか、あの子」
 ソフィーを楽しそうにシャイアは観察していた。
「じゃあ、シャイアさん。ボクも行きます」
 こちらも楽しそうに…嬉しそうにレイナート。
「あの子をしっかり守ってきな!」
「もちろん♪」
 
 追いついてきたレイナートに微かに視線をやり、弾みそうになる声を抑えてソフィーはたずねる。
「…レイナート様、シャイア様とのお話はもういいのですか…?」

「うん、もういいんだよ。ねぇソフィー?」
「はい。なんでしょうか?」
 レイナートが下からソフィーの顔を覗き込む。そしてにっこりと笑う。
「ボクらも踊らないかい?」
 奇妙な歌声や、大きな太鼓の音、笑い声や喝采、怒鳴り声が聞こえる中、それは小さな出来事。まるで子供の手を引くように、レイナートの手がソフィーの手を引く。
 

今日はお祭り騒ぎ。
 
みんなで歌って騒いで、泣いて笑って…
 
そう、取り戻したいのは、こんな世界。

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