夏の思い出
日番谷+乱菊+織姫
 現世の夏は尸魂界よりも格段と暑いと思う。
 ギラギラと射す日の光も、ジリジリと焼けるようなアスファルトの地面も、ミンミンと声高く鳴くセミの音もざわめく人の熱気も、尸魂界と比べるべくもない暑さと騒音で、身体中じわじわと汗が出てくる。
 しかしそれとはまた別の汗が流れてくるのを日番谷は感じていた。
 
 
 
「なぁ松本」
 隣にいる自分の副隊長に極力静かに話しかけた。
「なんでしょ隊長?」
 視線を少し動かして、松本は日番谷に返事を返した。その姿はいつもとは違い、こちらの世界でいう【こうこうせい】なる職業の服装をしており、『自分もそうだったな』と日番谷はぼんやり思った。
 
「たいちょー?」
 ひらひらと目の前で両手を振られ、自分の意識が一瞬飛んでいたことに気が付く。
「冬獅郎くん大丈夫?」
 視線をずらせば、屈み込んだ織姫と目が合う。にこにこと微笑む織姫にガクリと力が抜けるのを日番谷は感じ…いつもの訂正を入れる。
日番谷隊長、だ!……そもそも、なんで俺達は【こんな所】にいるんだ」
「そりゃああれですよ隊長。せっかく織姫が現世を案内してくれるって言ってるんだから来なきゃ損じゃないですか!」
 手を腰に当てて、当たり前の様に松本は言い放った。
「だからってな・・「あ、申し訳ありませぇ〜ん」」
 突然割り込まれた声に3人とも顔を上げた。何かの案内員だろうか、現世で言う【すーつ】を着込んだ女性が、申し訳なさそうに3人に話しかけてきた。
 
「大変申し訳ありませんが、このアトラクションにご乗車になるにはそちらのボクちゃんの身長が少し足りないようです」
 本当に申し訳なさそうに女性は言い、「ごめんねボク〜? 飴あげるから許してね〜」と言って日番谷の手に飴を握らせた。
・・・大きな七色のグルグルキャンディーだった。
「わあおいしそうだね〜♪」
 はしゃぐ織姫と、渡されたグルグルキャンディーをワナワナと震える腕に握り締めた日番谷。
「っっくあはははは! ちょ、もう駄目笑い死ぬ!!」
 
 そう3人は遊園地に来ていたのです!
(しかもジェットコースターに並んでいたらしい)
 
「 ぜ っ て ぇ ぇ 帰 ぇ る ! 」
 日番谷の怒りに震えた叫び声と、
「 ダ メ で す ( 笑 顔 ) 」
 松元の本当に楽しそうな笑顔が印象的だった、
 
そんな夏の日の思い出。
 
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2006/9/15
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