命なんて安いものだと思ってた僕が、君の命は何にも代えられないなんて。
 こんな場所にちっさい子供一人生き抜いてくんには、ふつうのガキじゃ生きられへん。だからボクは生き抜いてこれたんかもね。
 やってボク、なあんにも感じひんし。
 殴られても怪我しても笑っとったし、仏さんは見慣れてもうて何にも思わへんし、この世界にいるもんは自分と同じものやと思ったこともサッパリないし?
 ボクが生きてくんにジャマやったら殺すだけや。
 きっとずうっとこんなカンジで生きてくだけやと思ってたんよ。
 
 それなのに。
 
 乱菊といる時、ボクは普通の子供になってまうね。
 乱菊といるとボクの世界は一変する。
 ボクの世界に君という存在が、存在している事に気が付く。
 
 この世界にいるもんは自分と同じものやと思ったことなんてなかったんに。
 命なんて安いもんやと思ってたんに。
 乱菊を失うことを考えるだけで恐怖に駆られる自分がいて。
 
「乱菊、ボクの乱菊」
 
 こんなにも君の命が愛しいなんて。
 君の存在が愛おしいなんて。
 
 ああ、だけれども。
 世界が破滅するのが止められないんなら、ボクは率先して乱菊をこの手にかけよう。乱菊には綺麗な世界だけ見ていて欲しぃから。
 今はまだ、破滅へのほんの第一歩。
 
 世界が破滅するのが止められないのならば、ボクは率先して乱菊をこの手にかけよう。君の命は何にも代えられへんから。世界すら対価に値せぇへんから。
 壊すなら、全てボクの手で終わらせよう。
 今はまだ、君を遠ざけるだけ。
 
 
「・・・もしもこの破滅の流れが変えられるんやったら・・・」
 
 
 
 
ボクが消えてもこの世界で幸せになったって、愛しい人。
 
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2006/10/8
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