強くなりたい。強くて弱い君を守れるように
「薄汚れて、千切れても君だけのものでいたかった」のギンの行動に気が付いた乱菊さんっぽく。
【ギンの行動する意味はほとんどあたしの為だった】
乱菊ねえさんはスルドイ人だと思ってます。 
『 さいなら 乱菊 』
 
 部屋に一人で居ると、ギンの事を思い出す。ギンの事を考えると記憶は決まって終結するかのようにあの場面へと戻る。
 あの時手離してしまったギンの腕。言葉もなく見つめてしまったギンの横顔。
 
「・・・今更別れのあいさつしなんてしないでよ・・・」
 頭の中に何度も何度も鮮明に繰り返される言葉。頭痛すらしてきて、眉間に寄った皺を指でほぐすように押さえてみる。もう随分と昔にギンにとってあたしは【興味がないもの】に分類されたんじゃなかったの?
 
 
『 ご免な 』
 
 突然ストンと、今頃急にその言葉はあたしの胸に染み渡った。
 普段は全くといいほど感情を表に出さなかったアイツが、あの時だけは昔みたいにあたしの名を呼んで。
 
 ・・・あたしは何か見落としているんじゃないだろうか。
 とても大切なギンという存在について何か。
 自分のことよりも、いつもいつもあたしを優先させたギン。
 そんなの嫌だと、やめてと言ってもあたしの為に傷ついたギン。
『これだけは一生譲れへんよ』 
 肝心な事は何一つ言わない、強くて自分勝手なアイツ。
 だけど。 
 
「あたしの【何】に対して謝ったの、ギン」
 世界が、急に開けた気がした。
 

『さいなら、乱菊。ご免な』
 
「詰めが甘いのよホント」
 強くて、けれどもアイツが見せた一瞬の弱さ。
「さよならなんて聞いてやんないわ」
 
 見てなさい。すぐあんたのいるソラまで手を伸ばすから。
 すぐに手を掴んでやるから。
 
 そしたら今度こそ、絶対に離さない。
 
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2006/10/3
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